現代社会履修漏れ問題

 T教諭が追及していた府立東住吉総合高校「現代社会」での履修漏れ問題について説明しています。
 T教諭はこの件について内部通報しましたが、「履修漏れはなかった」「適正だった」として虚偽報告が為される結果となりました。その経緯を説明します。


 履修漏れ問題発覚の経緯

 2020年度の社会科会議のなかで、以下の画像のような資料が提出されました。


【 画像だけを表示 】

 府立東住吉総合高校では、1年生で公民科「現代社会」を履修しています。
「現代社会」は、高等学校で必ず履修する科目として、文科省の定める学習指導要領において法的に位置づけられた科目ですが、主に「倫理分野」「政治分野」「経済分野」「国際分野」に分かれています。
 ところが、府立東住吉総合高校では、上の画像のとおり、「「現代社会」(1年次必履修・2単位)=前半(政治分野中心)、「政治・経済」(2・3年次選択・2単位)=後半(経済分野中心)で例年実施してきた」と書かれており、「現代社会」の授業では教科書の前半しか扱っていないことがわかります。
 なお、教育委員会に提出されたシラバスでは、教科書全範囲を網羅することとなっていますが、これは「現代社会」の授業で教科書の前半しか扱わないことが違法であることを認識してるためであり、こうした運用の違法性を認識しておきながらそれを隠蔽するために偽装記載を行っている状況であるために、非常に悪質です。
 これら一連の行為は、生徒の学習権を侵害しており、全く許されるべきものではありません。


 T教諭の対応

 T教諭は情報公開請求をして、実際に「現代社会」でどのようなテストが実施されたのかを確認しました。これは、T教諭が情報公開請求によって入手したものです。

 → 【 現代社会 考査問題(PDF) 】


 すると、PDFのとおり、前半に掲載されている担当者Aの考査問題では、上の画像に「前半(政治分野中心)」とあるとおり、年間を通して、「倫理分野」「政治分野」しか出題されていません。
 担当者Bの考査問題では、後期期末(学年末)考査の第4問のみが「経済分野」の出題となっています。(これは、T教諭が校長に対して再三違法性を指摘したため、申し訳程度に授業を実施したものと考えられます。)

 さらに、T教諭は翌年度、実際にこの授業を受けた生徒に対してアンケートを実施し、「経済分野」「国際分野」をちゃんと学んだのか学んでいないのかを確認しました。

 → 【 現代社会 どの分野を学んだのかアンケート(PDF) 】


 これを見れば、「経済分野」「国際分野」を学んでいなかったことは明らかです。

 ところが校長は、「ちゃんと学習した」などと言い張り続けるため、T教諭は上記資料とともに再三追及したところ、今度は「ちゃんと学習したと担当者は言っている」などと、担当者に責任転嫁を始める状況でした。


 内部通報の結果

 T教諭は2020年9月に内部通報をしましたが、その返答が返ってきたのは2023年2月でした。(これはT教諭に指導改善研修命令が出た後です。この時期になって調査が終わった点についても非常に怪しい点があります。)
 当該校において令和2年度に「現代社会」の授業を担当した教員らに対し、学校長を通じて聞き取りを行いました。その結果、経済分野及び国際分野についても授業で扱われたことを、具体的な指導内容を聞き取ることで確認しました。
 また、定期考査の内容からも、経済分野及び国際分野を扱ったことを確認しました。例えば、定期考査において、担当者Aのテストでは、前期中間考査Wの問題においてSDGsに関する問題が出されています。この中で、「貧困をなくそう」や、「働きがいも経済成長も」という項目があり、授業では、この項目を入り口として、経済分野及び国際分野に関することを扱っていることを確認しています。同様に、前期期末考査のU及びXの問題においても、経済分野や国際分野に関連する問題が出題されています。
 また、担当者Bのテストでは、後期期末考査大問4に加え、前期中間考査大問3から5、後期期末考査大問2において、経済分野に関する問題が出されています。
 今回の確認にあたりましては、関係教職員の体調への配慮等の事情があり、この時期での御連絡となりましたことについて御理解をお願いいたします。
 教育庁による確認結果は以上です。

 要するに、教育委員会の主張は、シラバス通りの順番じゃなくとも、教科書の内容を網羅的に扱わなくとも、SDGsに関連して、「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」という項目を実施すれば、それで経済分野及び国際分野に関することを扱っているから問題ないという理屈です。
 上のPDFから担当者Bの「前期期末考査のU及びXの問題」を確認すると、Uでは、「ゲームソフトが我々の手元に届くまで順序をを考える問題」が出され、Xでは、「SDGsのクラス目標を書く問題」と「自己PRを80〜100字以内で書く問題」が出題されています。
 そうすると、大阪府教育委員会の認識では、「現代社会」の「経済分野」「国際分野」の学習については、SDGsに関連して、「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」という項目を実施し、ゲームソフトが我々の手元に届くまで順序をを考えたり、SDGsのクラス目標を書かせたり、自己PRを80〜100字以内で書かせれば足りるということがわかります。必履修科目を扱うにあたって、教科書のどの分野にどのように時間配分をするのかについては問題にしておらず、2単位授業の年間70時間のうち、例えば経済分野を扱う時間が3時間程度であっても、その内容が教科書やシラバスの内容に沿っていなくても問題はないということです。

 教育委員会は、履修漏れの事実を隠蔽するために、このような苦しい言い訳を考えたというのが本質的であると思います。
 このような事例からも大阪府教育委員会は、一事が万事、このような虚偽と言い訳にまみれていることがわかりますし、T教諭への指導改善研修命令は、このような違法・不当な行為を咎めるT教諭へのハラスメントであるという事実も強化される結果となりました。