PTA関連少額訴訟
T教諭は、前任校の教頭から「PTAは全員強制入会」との虚偽の説明を受けて、PTA会費を2年間に亘って不正に詐取されたため、その返還を求める少額訴訟を提起した経緯があり、その概要について説明します。
YAHOO! ニュース
ウェブサイト 2022/04/03(日) 10:01 【 記事 】
*少額訴訟で2年分の会費の返金を受けた/T先生
「4年前にPTAを退会した」と話すT先生(30代)は、関西の公立高校の教員です。
最初の勤務校にはPTAがありませんでしたが、4年前に着任した高校にはPTAがあったため、T先生は教頭先生に「PTAへの加入は必須か?」と確認したところ「必須だ」と言われたそう。「規約を見せてほしい」と頼んだものの見せてもらえず、翌年も同じやりとりを繰り返すことに。この2年間、T先生の給与口座からはPTA会費が引き落とされていました。
しかし、PTAはもともと任意加入の団体です。3年目、ようやく自分で入手したPTA規約にも「教職員が全員会員になる」とは書かれていないのを確認したT先生は、引き落とされた会費の返還を求め、少額訴訟を起こすことにしました。必須ではないものを「必須だ」と言った、教頭先生が相手です。
裁判はすぐ終わりました。和解となり、T先生は2年分のPTA会費と、訴訟にかかった費用(収入印紙代)を受け取ることに。その後はもちろんPTA会費の引き落としは止まり、次に異動した現任校でも会費は引き落とされていないということです。
なお、T先生がPTAについて最も「おかしい」と感じたのは、保護者に役員を無理強いすることでした。2校目では当初、管理職の指示に従って保護者の家に電話をかけ、役員を引き受けてくれるよう頼みましたが、一人の保護者が「絶対に嫌です」とこれを拒否。それまで2年連続で役員をやってくれていたのですが、その間に学校やPTAへの不信感を募らせる経験をしていたのでした。T先生は保護者の話に共感し、PTAをやめようと決意したそう。
自分がPTAを退会したことは、「教員でも退会できるんだから、保護者もどうぞ退会してください、という意思表示でもある」とT先生は話します。
訴状の概要
平成28年度および29年度に、大阪府立XX高等学校において教頭として勤務していた被告は、同校教職員であった原告に対し、「PTA規約に、『教職員は必ずPTA会員でなければならない』という記載があるので、仮に任意加入団体であってもPTAに加入しなければならない」と説明した。
原告は、PTAへの入会の意思がなかったため、被告にPTA規約を見せるよう要求したが、「総会で配布する」との返答であったため、これをその場で確認することができないまま、原告はそれを真実と思い込み、PTA会費を2か年度に亘って給与から徴収された。(年額2,700円)
平成30年度になって、実際のPTA規約を入手したところ、当該規約にその記載は存在しないことがわかった(甲1)。また、実際に、その後に規約改正がないのに、原告は平成30年度においてPTAを退会することができたので、そもそもの被告の説明が虚偽であったことが分かった。原告の入会意思を確認した入会申込書等も存在しない。このため、被告の虚偽の説明による原告の事実誤認のために発生した損害金5400円を返還請求するものである。
また、虚偽説明等による精神的苦痛に対する慰謝料50000円も併せて請求する。
なお、PTAは任意加入団体であって、職務に関係がないものであるため、この説明は被告から原告に対して私的に行われたものと解されることを附記する。
書証
甲1「PTA規約」:教頭の説明が虚偽であった事実を示すもの
甲2「平成28年6月の給与明細」:会費引落しの事実を示すもの
甲3「平成29年6月の給与明細」:会費引落しの事実を示すもの
和解の概要
和解条項
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被告は,原告に対し,本件解決金等として1万3236円(内訳:本件解決金1万円,訴え提起手数料及び郵便料3236円)の支払義務があることを認める。
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被告は,原告に対し,前項の金員を,平成30年7月10日限り,みずほ銀行XX支店の「T」名義の普通預金口座(口座番号*******)に振り込む方法により支払う。振込手数料は,被告の負担とする。
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原告は,その余の請求を放棄する。
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原告及び被告は,原告と被告との間には,本件に関し,本和解条項に定めるほか,他に債権債務がないことを相互に確認する。
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訴訟費用は,第1項の費用を除き各自の負担とする。