「指導が不適切な教員」・「指導改善研修」とは

 制度説明のため、文部科学省ガイドラインから抜粋します。
 参考全文:指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(平成20年2月8日。令和4年8月31日一部改定) (PDF:711KB)
 新旧対照版:指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(変更箇所赤字)(PDF:647KB)


「指導が不適切な教員」に実施される「指導改善研修」とは

 平成19年6月、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律が制定され、公立学校の教諭等の任命権者である教育委員会は、児童、生徒又は幼児に対する「指導が不適切である」と認定した教諭等に対して、指導改善研修を実施することが義務付けられることとなった。

 教員の中には、教科に関する専門的知識、技術等が不足しているため学習指導を適切に行うことができない者、児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行うことができない者等が存在することも事実である。

「指導が不適切である」教諭等とは、知識、技術、指導方法その他教員として求められる資質能力に課題があるため、日常的に児童等への指導を行わせることが適当ではない教諭等のうち、研修によって指導の改善が見込まれる者であって、直ちに後述する分限処分等の対象とはならない者をいう。

「指導が不適切である」ことに該当する場合には、様々なものがあり得るが、具体的な例としては、下記のような場合が考えられること。各教育委員会においては、これらを参考にしつつ、教育委員会規則で定める手続に従い、個々のケースに則して適切に判断すること。
 1. 教科に関する専門的知識、技術等が不足しているため、学習指導を適切に行うことができない場合(教える内容に誤りが多かったり、児童等の質問に正確に答え得ることができない等)
 2. 指導方法が不適切であるため、学習指導を適切に行うことができない場合(ほとんど授業内容を板書するだけで、児童等の質問を受け付けない等)
 3. 児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行うことができない場合(児童等の意見を全く聞かず、対話もしないなど、児童等とのコミュニケーションをとろうとしない等)


「指導が不適切な教員」の認定方法

「指導が不適切である」教諭等に該当する者がいる場合には、任命権者である教育委員会は、その権限と責任の下、当該教諭等を「指導が不適切である」教諭等として認定する。その前段階として、校長や服務監督権者である教育委員会が報告・申請を行うこととなる。
 その際、校長と教育委員会が一体となって、「指導が不適切である」教諭等を適切に把握し、報告・申請につなげることが重要である。また、校長や服務監督権者である教育委員会は、申請の前に、指導に課題がある教諭等に対して、研修履歴に基づき適切な研修の受講について情報提供や指導、助言を行い、指導が不適切である状態に陥らないように努めることも重要である。

 校長は、指導に課題がある教諭等に対し、情報提供や指導、助言を行って実施された研修によってもなお指導の改善が見られず、校内等での対応だけでは十分な指導の改善が見込まれないと判断し、「指導が不適切である」教諭等に該当すると考える場合には、任命権者である教育委員会に報告・申請を行う。

 教育公務員特例法においては、「指導が不適切である教諭等の認定」及び指導改善研修終了時における「指導の改善の程度に関する認定」を行うに当たり、「教育委員会規則で定めるところにより、教育学、医学、心理学その他の児童等に対する指導に関する専門的知識を有する者及び当該任命権者の属する区域内に居住する保護者である者の意見を聴かなければならない。」としている。

 任命権者である教育委員会は、専門家等の意見を参考としつつ、最終的には自らの権限と責任に基づいて認定を行う。


「指導改善研修」の実施

 指導改善研修の実施に当たっては、指導改善研修を受ける者の能力、適性等に応じて、また、当該教諭等の研修履歴を踏まえて、個別に計画書を作成しなければならない。

 指導改善研修の実施に当たっては、指導の改善状況を適切に記録する必要がある。この記録は、研修終了時の認定に当たって、当該教諭等の状況を客観的に証明するために必要となるものであり、当該教諭等の当初の状態からの指導力の変化等を適切に記録する必要がある。

 指導改善研修は、研修を開始した日から任命権者が定めた期間(1年を超えない範囲内。延長しても2年を超えない範囲内)が経過した時点で終了する。指導改善研修終了時において、任命権者である教育委員会は、「指導の改善の程度に関する認定」を行わなければならない。


「指導改善研修」の実施後の対応

 研修期間終了後、指導が不適切な状態が改善され、児童等に対する指導を適切に行うことができると認定された場合には、学校へ復帰することとなる。

 指導改善研修終了時の認定において、未だ「指導が不適切である」と認定された教諭等に対しては、指導改善研修後の措置として、分限免職処分や都道府県の職(事務職など)への採用等の措置が取られることとなる。(→すなわち、教育現場からの追放。)
 指導改善研修を実施してもなお、教員として適格性に欠ける者であって免職・採用等の可能性も難しい者や勤務成績が良くない者等、分限処分事由に該当する者については、任命権者は、当該処分を的確かつ厳格に行うべきである。