関係法令などの位置づけ

 T教諭への指導改善研修命令について、訴訟に関係する法令の法的位置づけをまとめています。(法令は簡易化のため一部省略しています。)



 教育公務員特例法
(指導改善研修)
第二十五条
 任命権者は、第一項及び前項の認定に当たつては、教育委員会規則で定めるところにより、教育学、医学、心理学その他の児童等に対する指導に関する専門的知識を有する者及び当該任命権者の属する都道府県又は市町村の区域内に居住する保護者である者の意見を聴かなければならない。
 前項に定めるもののほか、事実の確認の方法その他第一項及び第四項の認定の手続に関し必要な事項は、教育委員会規則で定めるものとする。
 以上のことから、教育公務員特例法では、「認定の手続に関し必要な事項は、教育委員会規則で定めるもの」として、その詳細を「教育委員会規則」で定めるように委任していることがわかります。



 教育公務員特例法第二十五条の指導改善研修等に係る認定等の手続に関する規則

 大阪府教育委員会において、教育公務員特例法25条5項および6項における「教育委員会規則」は、この「教育公務員特例法第二十五条の指導改善研修等に係る認定等の手続に関する規則」を指しています。
(趣旨)
第一条  この規則は、教育公務員特例法第二十五条第五項及び第六項(略)の規定に基づき、指導改善研修等に係る認定等の手続に関し必要な事項を定めるものとする。
(委任)
第十九条  この規則に定めるもののほか、事実の確認の方法その他認定等の手続に関し必要な事項は、別に定める。
 以上のことから、教育委員会規則では、「この規則に定めるもののほか、事実の確認の方法その他認定等の手続に関し必要な事項は、別に定める。」としていることがわかり、この「別に定め」たものは、「教員の資質向上をめざして―『指導が不適切である』教員への支援及び指導の手引き―」(訴訟における書証乙5)であると思われます。

 つまり、「法律の委任によって教育委員会規則が作られ、教育委員会規則の委任によって手引きが作られている」という構造です。

 「手引き」に関しては別ページに掲載されています。→【 教員の資質向上をめざして―「指導が不適切である」教員への支援及び指導の手引き― 】



 指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン

 一方で、文部科学省は、「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン」を定めています。
 参考全文:指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(平成20年2月8日。令和4年8月31日一部改定) (PDF:711KB)
 新旧対照版:指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(変更箇所赤字)(PDF:647KB)

 なお、この「ガイドライン」の法的位置は、次の「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律について(通知)」がその根拠です。



 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律について(通知)

 「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律について(通知)を抜粋して掲載します。(なお、この通知では旧法に基づき、教育公務員特例法25条ではなく25条の2と表記されています。)
 参考全文:「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部門改正する法律について(通知)(19文科初第541号)」(平成19年7月31日)
第二 留意事項
第2 教育公務員特例法の一部改正関係
1 総括的な事項について
(1)第25条の2及び第25条の3の措置の公正かつ適正な運用について
 第25条の2及び第25条の3の措置は、全国的な教育水準の確保の観点から、指導が不適切な教員に対する人事管理に関する所要の手続について法律上規定したものであり、その趣旨を踏まえ、各任命権者においては、指導が不適切な教員に対する人事管理システムのより一層公正かつ適正な運用に努めること。
(2)第25条の2及び第25条の3の措置と分限処分との関係について
 1 第25条の2及び第25条の3の措置が設けられたことにより、分限処分の要件には何ら変更が生ずるものではないこと。
 2 第25条の2及び第25条の3の措置は、児童生徒への指導が不適切な教員が指導に当たることがないよう、各任命権者が、より適切に対応することができるようにする趣旨から設けられたものであり、教員として適格性に欠ける者や勤務実績が良くない者等、分限免職、分限降任又は分限休職に該当する者については、当該処分を的確かつ厳正に行うべきであること。
 3 指導を適切に行うことができない原因が、精神疾患に基づく場合には、本措置の対象にはならないものであって、医療的観点に立った措置や分限処分等によって対応すべきものであること。
(3)教育委員会規則の制定又は改正について
 各任命権者においては、第25条の2第5項及び第6項において教育委員会規則で規定することとなっている事項のほか、指導が不適切な教員に対する人事管理システムに関し必要と認める事項があれば、教育委員会規則に規定すること
 なお、文部科学省においては、指導が不適切な教員に対する人事管理システムに関するガイドラインを作成し、各任命権者の参考となるよう、情報提供を行う予定であること。
 以上のことから、文部科学省は、教育公務員特例法の一部を改正する法律の施行にあたって、平成19年(2007年)7月31日付けで「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律について(通知)」を発出し、そのなかで、「各任命権者の参考となるよう、情報提供を行う」ために、「指導が不適切な教員に対する人事管理システムに関するガイドライン」を作成することを明記し、翌年の平成20年(2008年)2月8日にガイドラインを作成し、令和4年(2022年)8月31日にその一部が改定されたという事実がわかります。



 図式化

 以上のことを図式化すると、以下のようになることがわかります。


【 画像だけを表示 】

 以上のことから、仮に文部科学省がガイドラインを改正しても、各教育委員会において規則を改正しない限りは、ガイドラインが自動的に規則に反映されるものではないということがわかります。



 重要ポイント

 ■ 法律の委任によって教育委員会規則が作られ、教育委員会規則の委任によって手引きが作られている。
 ■ 文部科学省ガイドラインは、教育委員会規則を制定するための「参考となるよう、情報提供を行」なったもの。
 ■ 文部科学省がガイドラインを改正しても、各教育委員会において規則を改正しない限りは、ガイドラインが自動的に規則に反映されるものではない。